親和中学校・親和女子高等学校

親和中学校 卒業式が行われました

2024.03.25

3月16日(土)に 「親和中学校 第77回 卒業証書授与式」がおこなわれました。



                      第77回 卒業証書授与式 式辞


 六甲山から吹き降りてくる風にも早春の息吹が感じられ、校内の木々にも新芽が姿を現 している今日の佳き日、公私ともご多用の中、ここまで支えてくださいました保護者、ご 家族の方々、法人役員、汲温会員、各位多数のご臨席を賜り、親和中学校第77回卒業証 書授与式を厳粛かつ盛大に挙行できますことを心から嬉しく思い、厚く御礼申し上げます。

 ただいま卒業証書を授与しました 176 名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。

 思い起こせば三年前、皆さんは真新しい制服に身を包んで、本校の校門をくぐりました。  それから早や三年、皆さんは本校で多くのことを学び、様々な体験をし、立派に成長し ました。この親和中学校で過ごした三年間は、皆さんにとってかけがえのない、思い出深 いものであったと思います。本校に入学以来、「誠実」「堅忍不抜」「忠恕温和」の三つを生 活の軸にして、授業はもとより文化祭、体育祭などの学校行事や部活動をとおして、この 精神の高揚を図りました。卒業式に臨み、皆さんの胸の中には、それら様々な思い出がよ みがえっているのではないでしょうか。

 ただ、中学校生活の二年間は、コロナウイルス感染症拡散により耐え忍ぶ二年間となり ました。当たり前が当たり前でない日常生活の日々となり、学校行事や部活動等のあらゆ る活動や大会が中止・変更となりました。不満や不安とやるせなさが募る月日だったと思 います。

 このコロナ禍の二年間も含めて、皆さんが本校での生活をとおして培った、苦しみや厳 しさに耐える力や周りの人への優しさや思いやり、そして誠実を旨とする態度や精神は、 これからの高校生活でも、自らを輝かしいものにし、多くの人から信頼と期待の念を寄せ られることになるに違いありません。とりわけ積極的な態度や行動力はこれからの生活を 充実させることになるでしょう。

 ここで、新しい高校生活を活躍の舞台とする皆さんへの餞(はなむけ)に二つお話しを します。

 一つめは「これからの高校生活では将来の進路目標を定め、その達成のために自分自身 を成長させて欲しい」ということです。

 ある落語家が二十八歳の時、林家こぶ平さん(現在の正蔵さん)と一緒に、真打ちとい うトリを勤めることができる実力のある噺家に昇進した時の話を紹介します。

 真打ちが発表されると、二人がいる部屋にマスコミが取材に押し寄せましたが、フラッ シュを浴びるのはもっぱらこぶ平さんだけ。側にいる自分には誰も見向いてくれない。く やしくてその場を抜け出し、電車に飛び乗ると偶然、遠縁に当たる化粧品会社の社長が乗 り合わせていました。「浮かぬ顔をしてどうしたんだ」と聞かれ、わけを話すと、社長は「ウ サギとカメの童話があるだろう。ウサギはどうしてのろまのカメに負けたのか、言ってご らん」と言います。「ウサギにはいつでも勝てると油断があった。人生油断してはいけない という戒めです」と答えると、社長は「それは零点の答えだ」と語気を強めて言われまし た。「カメにとって相手はウサギでもライオンでもよかったはずだ。なぜならカメは一度も 相手を見ていない。カメは旗の立っている頂上、つまり人生の目標だけを見つめて歩き続 けた。一方のウサギはカメのことばかり気にして、大切な人生の目標を一度も考えること をしなかった。君の人生目標はこぶ平君だけではないはずだ。賢いカメになって歩き続け なさい」。

 この話はこれからの皆さんの高校生活にも通じることで、目先の成績だけを気にして学 校生活を送るのではなく、多少の浮き沈みがあっても、それに捕らわれることなく将来の 目標をしっかりと持ってそれに向けてコツコツ歩み続けて欲しいのです。

 そして、二つめは「人と比べるのではなく、自分自身と比べて成長して欲しい」という ことです。

 WBC で優勝して世界一となった日本チームの栗山監督は、選手の当時、結果を出せず に苦しんでいました。そのような自分に対して、当時二軍監督だった内藤博文さんは「人 と比べるな」と言ってくれたのが、栗山さんにはすべてだったそうです。当然、プロの世 界ですから人と競争して生き残っていかなければいけません。でも、他の選手と比べるよ りも、まずは今日よりも明日、明日よりは明後日と、少しずつでも自分自身の野球がうま くなっていけばいいと、内藤監督は言ってくれました。当時の栗山さんは、珍しいくらい の落ちこぼれだったそうですが、そんな自分の可能性を内藤監督は信じてくれた。そこで、 昨日の自分よりも少しでもうまくなれ、というのならできるはずだと思って、内藤監督に 喜んでもらおうとひたすら努力をしたそうです。

 昨日よりも今日の自分の成長のために努力をすることは、素敵なことであるし、大切な ことだと思います。この春から始まる新しい高校生活での学び、様々な人との出会いとつ ながり、自分の進路に向き合い熟考する経験、それらをどのように結びつけるかが自己実 現への道となります。大切なことは、将来の目標をしっかりと持ち、それに向けた成長は 人と比較するのではなく、自分自身を高めるように日々努力をしてください。

 そして、自分の力に自信を持ち、じっと待つのではなく、自ら積極的に求めなければ何 も手に入れることはできないということも、今一度理解してください。将来の夢や目標を 定めて自分の進むべき先をしっかりと捉え、自分の可能性を信じ、力強くチャレンジする ことを大いに期待しています。

 

 最後になりましたが、保護者の皆様には、今日ここに義務教育を終えて中学校を卒業し ていこうとするお嬢様の姿を目にされ、幼い頃からの生い立ちを思い出されるなど、感慨 もひとしおのことと存じます。

 私どもは、お嬢様をお預かりして不十分な点もあったかとは思いますが、全力で教育に あたってまいりました。ここにいたるまでに賜りましたご理解、ご支援に対し、この場を お借りして深く感謝申し上げます。

 

 卒業生の皆さん、これからはしっかりとそれぞれの先を見据えて、新しい時代を拓くパ イオニアとして活躍するために、迎える高校生活を充実させてください。皆さんの前途が 幸多いものとなり、新たな一歩と、それに続く未来が光輝くものとなることを心から念願 し、式辞といたします。


令和6年3月16日 親和中学校長 中村 晶平